東浩紀氏へ伝えたいこと

南京事件論争も従軍慰安婦論争もインターネット上での否定派と肯定派の力関係は逆転してきてます。

少し例を挙げましょうか。何気なくネットサーフィンしてたらこんなブログが見つかりました。

http://blog.livedoor.jp/f_117/archives/13703943.html

「カレーとご飯と神隠し」というサイトの2005年の記事です。どうやら「しがない記者日記」という実在の記者ブログが炎上したようで、その件に関してのコメントのようです。元の記事の一切が削除されているので実際にどういう論争が起きていたかは定かではありません。が、その一端は垣間見えます。

南京大虐殺がなかったのは捏造とか、従軍慰安婦なんて造語を持ち出してきて、日本軍が全て悪い、みたいなニュアンスの、それこそ印象論や根拠のない妄想までいろいろ書かれていて、最初はうんざりして、ネタにするのやめようと思ったけど、結局ネタにしてしまった。というか、読むのが(記事が消されててて大変だったけど)おもろくなってきた。
なぜ「反論できない」のに嘘だと断定するの?「素人」で「再勉強」しなきゃ論じられないレベルなのに一方的で自虐的な歴史観を持ちたがるの?こんな記者が記事書いていていいの?国連やらどこぞの教授やらを持ち出さないと何も言えないの?と好奇心がわいてきた。

どうやらその記者が「なぜ南京事件従軍慰安婦問題といった事実を否定したがるのか」と書いたことがお気に召さない御様子。興味が湧いて「しがない記者日記」で検索してみるとまとめ記事が見つかりました。

http://blackshadow.seesaa.net/article/1839535.html

「幻影随想」というブログ。ちなみにここでも興味深い記述が見つかります。

…挑発してますか?
ろくに知識も持たずにその話題に触れるなんて墓穴を掘るようなものだというのに。
当然ながらコメント欄は更なるフィーバー。
徹底的に論破されます。

なんとまあ記者さんは「論破」されちゃったそうです。

さて最初のブログの人は「高校生なのにかなりの論客」と評判だった方のようですし、まとめ記事を書いた方に至っては「ニセ科学批判」を熱心にされている方のようです。

その彼らをして否定論のインチキさが全く分からなかったわけです。その時に例えば「南京事件FAQ」とか「従軍慰安婦問題を論じる」があれば笑われるのはどちらだったんでしょうねえ。いずれにしてもその記者さんにとってみれば本当にお気の毒でした。全くもって時期が悪かったとしか言いようがありません。2005年当時は南京事件従軍慰安婦を取り上げると炎上しかねない、まだそういう時期だったんですね。


ところがいまや状況は全然違います。反歴史修正主義を掲げる人たちの地道な努力により、そういったタイプの炎上は明らかになくなっている。というか寧ろ真正面から「南京事件はなかったんだ」という人の方が生温かい目で見られるという状況とすら言えるかも知れない。今回「反歴史修正主義者たちは気に食わない」と主張している人でも、じゃあ「修正主義者の議論が正しいといえるのか」については「正面から」擁護の論陣を張ることは全く出来ないわけです。

なぜでしょうね?肯定論など2005年には堂々と「論破」できたはずなのに?というかそういう方向での議論が少しはあっても良さそうなのに?あの時記者さんを「論破」したはずの大勢の人たちはどこに消えちゃったんでしょうか?

定量的に調査したわけじゃありませんが修正主義はネット上ではかなりのスピードで勢いを失っていると思います。だって「しがない記者ブログ」さんのようなタイプの炎上って最近聞いたことあります?もちろんこのままゼロになるとは言いません。修正主義にしがみつかないと精神の均衡を保てない人もいる可能性もありますので。ですが、地道で実証的な議論の蓄積はネット上では効果があると思われます。

実証的な議論は効果がないだとか、どうせ分かり合えないというシニシズムに東氏がコミットしたがるというのは残念なことです。