ホンダ議員提出の決議案と国家賠償について

一読者=中道右派海老蔵=厚顔氏の常石さんのブログでの次の主張はこういうものであった。

仮に違法な実態に政府や軍が主体的に関与していたら、日韓基本条約時の請求権条約で解決済みということになるのが、締約国の当時の公式解釈からは理論的な帰結です。

まず今回の決議案は国家賠償を云々したものではなく、あくまで謝罪を求めたものだ(道義的な責任を問うている)。だからここで日韓基本条約の請求権協定を持ち出すことは全く的を外している。

その指摘を行うと彼はいきなり

決議案では、個人補償要求も盛り込まれていたと思いますが・・・
これも違うのなら、そのソースを教えてください。

と言い出した。自分から問題を提起したのなら最低限自分がその根拠となるソースを提出するのは礼儀、いや義務である。うっとうしい「甘え」が見て取れる。
で、私は結局
http://www.thomas.gov/cgi-bin/query/z?c110:H.RES.121:
という原文を示して見せた(なぜ私が示さなければならないのか分からないのだけれども、彼の「検索能力」は著しく低いらしいので仕方がない)。いずれにせよこれで話は終わりである。請求権協定をもって当該決議案に反駁した気になるのは無意味である。ところが驚いたことに彼は

現在の議論として的を外していても、仮に決議案が可決されたら、当然問題になりえますから、将来を予測した議論としては的を外していないと思います。
私は、決議案の原文を読んで、ますます韓国の河野談話の経緯に対する背信的行為と、米国内での対日企業戦時賠償請求訴訟へのホンダ議員の関与の経緯が、組み合わされた形での、将来の蒸し返し補償要求を予感しました。

などと言い出した。「予測」の根拠は示されず「私は予感した」というだけである。話にならない。もちろん付き合う義理はないのだけれども仕方がないので再び助け舟を出してあげることにする。ホンダ氏の声明である。

私は、アジア女性基金を通じて慰安婦生存者に金銭的賠償を行おうとした日本の努力を評価しております。アジア女性基金とは政府によって着手され資金の多くを政府に負う民間基金であり、その目的は「慰安婦」に対する償いをねらいとしてプログラムやプロジェクトを実行することでありました。アジア女性基金は2007年3月31日をもって解散することとなっています。私は、アジア女性基金が重要であったということには同意しますが、現実は、大多数の慰安婦生存者がこれらの資金の受け取りを拒否したということであり、日本政府からの、疑いの余地も曖昧さもない謝罪がなければ、その金は彼女たちにとって意味を成さなかったということなのです。

http://www.wam-peace.org/main/modules/news/dl/070131honda.pdf

この声明は「民間基金を高く評価し、これを機能させる為にきちんとした謝罪が必要である」という主旨であり、決議案に国家賠償をこそ求めているというわけでもない。これが素直な解釈である。が。彼は引き下がらない。

あなたは、自分に都合のいい部分しか取り上げていませんね。私はホンダ議員のホームページで全文を読みましたが、事実認定部分には多数の誤認がある。

またしても堂々たる論点の「すり替え」である。誰が「この問題についてのホンダ氏の事実認識が正しいか否か」を議論していたのだろうか?論点は「ホンダ氏は国家による個人補償要求を求めているが故にこの決議案を出したのかどうか」だったのであって(それすらも当初の論点からはズレているのだが)、上記の主張は何の反論にもなっていない。「天然」だとしても寛容でいられるのには限度があるし、自覚があるのなら悪質である。しかし私が「すり替え」を指摘すると、

ホンダ議員らの意図は、あの事実誤認だらけの内容を事実と認めて謝罪し将来の教育もしろということですよ。日本独自の事実認識に基づく新たな謝罪をしたら、ぜんぜん法的拘束力は無いのにおそらくまた叩かれる。本当に事実関係部分が真実だと思い込んでいる節があるというのは、ホンダ議員はいわゆる売春婦的慰安婦は他の国にもいたが奴隷制慰安婦は日本だけだという差別化を報道で強調していたんですよ。この報道はソースが必要かもしれないのでこれから検索します。

ここまで来るともう「元々の論点はなんでしたっけ?」という話である。彼は「検索する」といったまま何も示せていないが、出来れば論点に合致したホンダ議員の発言、例えば「この決議案が通れば次は賠償請求決議だ」といったものの発掘をお願いしたいものである。彼の検索能力からして相当困難だとは思うが。

ちなみにその後彼は未だに検索を終えていないようである(笑)

と思ったらしばらくたって彼がこんなものを示してきた。
http://www.donga.com/fbin/output?f=f__&n=200703130324

カナダで賠償請求決議案が提出されたとの報道である。一体これが今までの議論と何の関係があるのか全く不明である。そのように答えると

http://blog.mag2.com/m/log/0000063858/
お読みください。
あなたが、歴史には詳しくても、現実の政治や法律には無知で、被害者ファッショないし被害者イノセント説の信奉者、又は売国奴のどれかであることは、よく分かりました。

彼はこんなコメントをしてきた。一読すれば分かる通り、陰謀論の香りが漂うあまりに香ばしいサイトである。こんなものを評価してしまうというのは、普段の読書レベルが窺い知れるというものだ。「WILL」の愛読者なのだろうか。しかもこのサイトを評価するかしないかで「現実の政治や法律には無知」であるとか「被害者ファッショないし被害者イノセント説の信奉者、又は売国奴のどれかである」かが分かるらしい。もはや唖然とするしかない論理である。しかも私がバカ正直に「いや陰謀論サイトを紹介されて勝ち誇られても…」と困惑したコメントを出せば

私には批判の具体的実証を求められたあなたのことだから、きっと具体的に実証してくれることでしょう。それができないと誹謗中傷になるんですよね?あなたの考えでは。

と来るわけである。陰謀論についてwikipediaを見てみよう。

陰謀論は一般に、強い権力をもつ者(一国もしくは複数の国の政府、警察、軍隊、あるいは巨大資本など)が一定の意図を持って一般人の見えないところで事象を操作している、とする主張である。

上記のサイトは「そのまんま」である。

あいまいさ、根拠の不確実さ、証明が難しいことが陰謀論陰謀論たるゆえんであり、大きな事件がおこるたびに、何らかの裏の理由、策謀があったという考え方が止むことはない。

これも面白いように「そのまんま」である。

というわけでまともに相手にする価値も本来ないわけだが仕方がないから(例えばハイデン法のような)州法に関して連邦高裁(最高裁)が

「外交権は連邦政府だけに認められ、州法によって訴訟の根拠を作り出すことはできない」
毎日新聞 2003年10月7日より)

と述べている点を指摘した。はっきり言って決定的な反論である。しかし彼はひるまない。彼の強弁を聞いてみよう。

米連邦最高裁でもわずかですが判例変更の可能性があります。

まさにこれは彼が陰謀論にハマっていることを示している。再度wikipediaの記述を引用しよう。

あいまいさ、根拠の不確実さ、証明が難しいことが陰謀論陰謀論たるゆえんであり、大きな事件がおこるたびに、何らかの裏の理由、策謀があったという考え方が止むことはない。

ご愁傷様、というやつである。