日本政府の賠償問題に対する考え方

http://d.hatena.ne.jp/nomore21/20070321/1175654816#c1175756911

時系列の点だけレス。

>取引条件として金泳三大統領は河野談話の約5ヶ月前にじらしにじらした国家補償不要カードを切っていたのですから、国家補償不要という取引条件で政治判断を促されたと見るのが自然です。

五十嵐氏を含む調査団は92年の8月に既に訪韓して盧泰愚政権の外務担当者、野党だった金大中氏、与党だった金泳三氏に会ってこの話を聞いています。つまり金泳三は自身のそれまでの発言をそのまま繰り返したに過ぎず、またそれは韓国政府の従来どおりの立場の踏襲にすぎません。韓国政界の全てが補償問題を考慮していなかったのです。従って韓国が「物的補償を問題にしない」ことはかなり前から日本にも周知されていたわけです。このとき明らかになったわけではありません。「じらしにじらした」とebizoh氏は主張するが、何を根拠にそう言われるのか、事実を持って御説明いただきたい。


さて韓国は「賠償問題」を将来取引材料に使えると思っていたのだろうか?では賠償問題についての日本のスタンスを見ておこう。

村山内閣の時に「女性基金」が誕生したのだが、そのときの政府の立場はもちろん「賠償問題は国家間条約によって解決済み」。しかし「元慰安婦」に関しては河野談話を受けて「お詫びと反省の気持ちをどのように表すかを検討中」というものだった。(五十嵐氏の談話による)


慰安婦に関して賠償問題を一切蒸し返さない」という立場を日本が韓国に要求し、その結果河野談話が出たのだとしたら「検討中」とはならないはずだろう。「賠償問題を蒸し返さない」ことと引き換えに「河野談話が出た」という「密約」の存在は既にここの段階で疑わしい。


そこでその「表現」の一環として「女性基金」が誕生するのだが、これは償いに充当するのは確かに民間からの寄附金だが、基金の維持運営に関わる事務所経費は、国から支出されるという「半官半民」の基金だった。さらに、実際に募った寄附が足りなかった場合足りない分は「政府が責任を持つよりしょうがない」とされた。政府は賠償問題でも腹を括る決意だったわけである。


どうだろうか。河野談話時に「賠償問題を蒸し返さない」ことを日本が求め、或いは韓国がそれをちらつかせて交渉が進んだとすれば、このような話になるだろうか?なるはずがない。日本は厳しい交渉の末「蒸し返さない」とせっかく韓国から言質を勝ち取ったはずの「賠償問題」を自ら勝手に「蒸し返した」というわけだろうか?まあその可能性も無くはないが、日本政府というプレイヤーを相当非合理的と仮定しなければ成り立たない説だろう。