韓国が個人補償請求するなら日本も在韓資産返還請求できる?

日本と韓国はお互いにバーターで個人補償請求を放棄しあったわけではない(この点については後述)。


嫌韓流」など歴史修正主義者は都合の悪いことを省略して議論する癖があるのだが、日本の財産を接収したのは韓国ではなく米軍である。1945年12月6日「米軍政法令第33号」が韓国に公布され同年9月25日付けで一切の日本の在韓資産はアメリカ軍政庁の所有に移された。そしてその後大韓民国成立後米韓の間で「米韓間の財政及び財産に関する協定」が結ばれこの協定によってこれらの財産が、韓国政府に委譲された。そして日本はサンフランシスコ講和会議でこの一連の処理の効力を既に認めてしまっているのである(第4条のb)。


しかし日本は韓国との交渉にあたり、この処理に対して異議を唱えて賠償交渉を有利に運ぼうとした(薄々無理筋とは自覚していたようだが)。


が、結局以下の経緯で、抵抗むなしくその異議の撤回を余儀なくされる。


まず日本の抗議に対し韓国が国連総会に書簡を発送し「サンフランシスコ講和条約第4条のb」の解釈を求めた。すると同条約の起草に主導権を握っていたアメリ国務省から日本は韓国に対して有効な財産権を主張できないと釘を刺された(1952年5月15日)。

また1957年12月には再度両国にアメリカ政府の同条約同条項に関する解釈=既になされたものと変わらぬ解釈が伝達された。そして結局同年日本はそれを受け入れたのである。


要するに日本は日韓基本条約ではなく既にサンフランシスコ条約で在韓財産に関する請求権を放棄している、というところがポイントである。日韓基本条約締結時には「バーター」など成立していないのである。


さてもう一つ平成3年8月27日参議院予算委員会での外務省の答弁を示しておく。

いわゆる日韓請求権協定におきまして、両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます。その意味するところでございますが、日韓両国間に存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。

日本はここで日本国民による個人請求権は消滅させていないと言っているかのように見える。しかし例えば在韓資産を持っていた日本人が韓国政府に返還要求をすることは法的に不可能だろう。まず第一に接収したのはアメリカ軍であるということ(公有・私有問わず)。そしてそれを日本がサンフランシスコ条約で承認してしまっているからである。つまり求償請求の宛先は日本政府しかありえないと思われる。


一方韓国はそうではない。日本に対して個人請求は可能なのである(日本政府もそう認めている!)。もちろん日本の裁判所で認められるかどうかは別問題だが。


というわけで結論。
韓国人が個人補償請求をしてくるなら、日韓条約を破棄して日本も在韓資産返還請求をしよう(得するのは日本で困るのは韓国)とか言ってる人たちは「売国奴」なので注意しましょう。日韓条約を破棄しても日本人の韓国政府に対する在韓資産請求権は生じません。日韓条約は死守すべきなのです(笑)

その他の参考になるサイト
http://ameblo.jp/scopedog/entry-10057809478.html(誰かの妄想)
http://www.han.org/a/half-moon/hm060.html#No.386(半月上通信)